逆さ刷毛(さかさはけ)

 

 裏打紙にたっぶりつけた糊(とくに濃い糊)を取り除くときにこの動作をする。刷毛の毛
を弓なりに反らせ押しすすむことで、糊が刷毛の先について取り去られる。力をいれると
たくさんとれ、ゆるめると少なくとれる。

 

酢酸ビニルエマルジョン(さくさんびにるえまるじょん)

 

 正しくはポリ酢酸ビニールエマルジョンのこと。酢酸ビニール分子が連続してたくさん結 合した高分子体で、エチレンと酢酸とを化学反応させて合成した樹脂状の物質。水の中に 油脂分か、細かい粒子の状態で分散している乳濁液。水溶性で取り扱いやすく安価である ので、木工接着、塗料原料、繊維加工、紙加工、製紙工業など多分野に使用されている。

 

下げ干し(さげぼし)

 

仮貼板に一道のみを糊づけしてかわかす方法で、とくに場所をとらないので一度に何枚も 紙本の肌裏打をするのに連する。また、福島絹はこの方法をとる。

 

CMC (シーエムシー)

 

 カルボキシル・メチル・セルローズの略で繊維素グリコール酸ナトリウムのこと。セルロ ーズを主原料にした無味無臭の半合成糊料。有機溶剤・油・グ`リースには溶けないが、冷 水・温水に溶けて保水性に優れ、皮膜は透明で強靫である。天然糊料に比べ化学作用に対 して安定している。

 

紙管 (しかん)

 

 原紙で中心が空洞になっている棒状の紙筒のこと。紙筒のほうが直径が小さく紙の厚さも3mmくらいまでで、紙の筒として賞状入れなどに使われている(化粧紙が貼ってあリ糊付き)。紙管となると原紙も厚くかなりの強度があり、工業用品として使われていることが多い。

 

軸助け(ジクダスけ)
軸棒の取りつけ部分、左右の裏端に補強してある絹布を軸助けという。軸助けの形はいろ いろあり、表具師のかくれた証となっている。

軸袋(ジクブクロ)
掛け軸の下の部分の丸い棒(軸棒)を貼りくるむ裏側の紙をいう。丈夫な和紙を使用する 細川紙(精緻の生漉きの紙)など。

地獄裏打(ジゴクウラウチ)
裏打の工法のひとつである。作品の裏面に糊をつけ裏打紙をその上にのせて、刷毛で貼り つけることをいう。壁紙を貼るのに壁に糊をつけて(向う糊)貼りつけることを地獄貼(裏 打)という。表具のときには単に地獄と呼称している。

地獄貼(ジゴクハリ)
地獄裏打と同じ意味で、裏打、壁貼りの工法のひとつである。

下張りする(シタバりする)
パネルや額の骨に表紙を張る前に骨縛り、袋張りをすることを下張りをするという。骨を しっかりさせて、表紙、裂地をきれいに見せるために下張りをする。

紙片(シヘン)                             ゜
起し紙やヘラバサミ、紙テープのことを紙片と呼ぶことがある。本書ではp.22の裏打の食 い裂きの左右のはがれ防止に貼ってあり、p.40では仮巻の作品の貼付用に紙テープの代わり
りとして紙片と呼んでいる。 
                           


紙本(シホン)                                 
紙に書かれた作品のことを低木という。絹に書かれたものを絹本(ケンポン)という。絖 (ヌメ)に書かれたものを親木(コウホン)という。                 

湿りをいれる(シメりをいれる)                          
裏打と乾燥の繰り返しで、掛け軸が出米上がっていく。裏打をするときには裂地、作品 ときには裏打紙にも湿りをいれて行う。たっぷりいれても、かすれていれてもまずく、湿 りの具合で作業の早さと仕上がりが決まる。糊の濃度と同じような感覚で覚えること。 

宿墨(シュクボク)                                ラ’
墨を擦ってから一一夜を経過した墨液。二カワ分か腐敗して定着力が失われた墨なので、裏 打するには落ちやすく扱いにくい。とくに裏打をするにはひげを出さないように、養生紙 を敷いたり、湿りを加減したり、ドウサ液などで色落ちを止めてとりかかってほしい。墨 のにじみ具合になんともいえない味が出るので書家の中では好わ人がいる。

 

シュロ刷毛(棺欄・津久刷毛)(しゆろハケ・シュロ・ッグハケ)

  椋欄の鬼毛、ッグ毛(ヤシ科の常緑喬木で葉柄の繊維)の刷毛で、毛先が2寸(6p)幅5寸(15cm)。裂地の肌裏打、増農打、中農打、総裏打などのときに使い、和紙と和紙とをつなぎ合わせるものにも使用する。使用後は毛先を少し湿らせて、手のひらで毛先についた紙カスをなで下ろす。水につけて洗うことはしない。植物のアクが出るので使い初めに中性洗 剤で洗い落としてから使用するとよい。

上進洲(ジョウエンシュウ)
光沢を抑えた、織りのしっかりした正絹の裂地。中廻し天地用に使用できる。渋味のある 裂地。

正絹(ショウケン)
表装の裂地は絹、綿、化学繊維などで織られている。絹糸だけで織られている裂地を正絹 と呼んでいる。正式には絹で織られたものというべきであろう。正絹は光沢があり、糊シミはよく目立つので扱いには注意が必要である。

正絹本緞子(ショウケンホンドンス)
絹で織られた光沢のある綾子織の裂地。中廻し用の裂地。中廻しとは、三役大和表具のと きに作品のまわりにくる裂地。

しょうふ糊(しょうふノリ)
小麦粉からとれたしょうふ(白い固まり)に水を加えてトロ火で煮るとしょうふ糊ができ る。新しいしょうふ糊(新糊)は切継ぎ用などに使う。古糊は、しょうふ糊を5〜10年ね かせて使用するもので新糊と混ぜて裏打用として使う。

水線(スイセン)
和紙を食い裂きに引き裂くときに刷毛(切継ぎ刷毛がよい)で定規に洽って水をつける。 その水の跡を水線という。水線の幅は1分(3mm)くらいがいちばんよく毛足が出る。細 いと出にくく、大いと食い裂きが曲がってしまい、ジグザグになる。切継ぎ刷毛の水の含 ませ方による。

すげる
軸棒に軸先を取りつけることをすげる(符げる)という。

筋にする(スジにする)
覆輪とは違い、紙や裂地の端を色紙(イロガミ)、金・銀紙で裏面から貼りつけて、その幅 を同じ寸法に5厘〜1分(1.5〜3mm)に切り落としてできた色筋、金筋、銀筋のことをいう。 筋にする紙は覆輪にする紙よりか厚くなくてはならない。

スノコ
細い竹(竹ヒゴ)を並べて編んだもので、和紙を漉くのに使用する道具。和紙にはそのス ノコの跡が残っている(漉き目)。

総裏打(上裏打)(ソウウラウチ・アゲウラウチ)
掛け軸の裏打で最後の仕上げの裏打のことをいう。薄い糊で宇陀、美栖を使う。薄口、中 厚(中肉)、厚口がある。このとき福島絹も貼る。

染紙(ソメガミ)
薄い楷紙を染めた紙で、緑、茶、グレー、エンジ色などがあり、大きさは2尺×3尺 (60 cmx90cm)で紙衣具に使われ、渋い独特の風合を出している。 p.36の染紙は単に染めてあ る和紙で厚手のものであり、寸法も大きい。3尽×6尺(91cmx182cm)。